本学大学院が果たすべき役割は、学生に2つのチャンスを提供することだ、と考えています。
1つめは『自分の研究成果を、外に発信する』チャンスです。院に進むと、学会発表の機会に度々恵まれます。自分の研究によって生み出されたモノを、システムを、解析手法を、外に発信するのです。誰かのマネや過去の研究の繰り返しでないオリジナルな成果を発表するということは、自分の発想やアイデアを世に出し、新たなモノや仕組みの開発につなげる、大いなるチャンスと言えます。また大学院では、企業との共同研究に参画する機会も増えます。企業と一緒に研究を進め具体的な製品を開発するわけですから、これも外に発信するチャンスの一つでしょう。
外に向かって発信すれば、様々なリアクションが返ってきます。厳しい批評の場合もあるでしょう。思いを同じくする他の研究者と情報交換もできるでしょう。そうした批評や交流が、自身を磨き、鍛えるきっかけになります。
工学系研究科長 浅野 敏郎
もう1つのチャンスは『自分で思考し、模索し、自分なりの道を見出す』ということです。既に述べた通り、学会や企業との共同研究といった場で自分の成果を発信するには、オリジナルなテーマでなければなりません。それを探すためには、世界中の研究者が何に目を向け、どういった研究に取り組んでいるのかを知る必要があります。その中で、世界の広さを実感するでしょう。そうやって育まれたグローバルな視点で自分を見つめ直し、オリジナリティーとは何かを考え始めるのです。こうした一連のプロセスが、研究者としての成長を促進するのは間違いありません。
「オリジナリティー」というと難しく感じるかもしれませんが、ほんのちょっとのひらめきなのですよ。例えば、私自身が長く携わっている画像認識の分野で言うと、今まで対象物を1台のカメラで撮影したものを、2台にしてみた。すると、今まで捉えきれなかった現象が見えてくるようになった、ということがよくあります。1台のカメラを2台にしてみる。タテのものをヨコにしてみる、上から見てみる。必要なのは、そういった小さなアイデアなんです。それがオリジナリティーであり、新たな研究の道を開き、過去になかった技術を実現する第一歩になるのです。
モノづくりにおけるメイドインジャパンの質の高さは、世界から高く評価されています。日本が今もなお世界一の品質を保つ製品・技術分野は、たくさんあります。グローバル競争が激化する中、日本が第一級のモノづくりを続けるには、国際的視野と豊かな独創性を持った研究者・技術者が不可欠。歴史もあり、指導体制も整った本学の大学院から、日本の、いや世界の科学技術をリードする高度な知識を有した人材を、数多く輩出していきたいですね。
「独立独歩」
私自身が中学卒業時に恩師から頂いた言葉であり、卒業生にも必ず送っています。研究者・技術者にとって最も大切なのは、自分の道を切り拓く姿勢です。働く場所が大手企業であろうと新興ベンチャーであろうと、関係ありません。新たな地平を見出すことができるのは、自分の力で進もうとする者なのです。第一、その方が面白いですよ。誰にも真似できない独創的な研究で、社会に貢献するという充実感を味わえるのですから。